間接目的語って何?
イタリア語の間接目的語は、間接補語のひとつです。
間接補語は、前置詞(a, in, per, con, su…など)を付けて、文の表現をより豊かなものにします。
まずは間接補語からみていきましょう。
例えば、
Vado in Italia.
(わたしは)イタリアに行く。
この文の in Italia が間接補語です。前置詞 in を付けて間接的に文章を補っています。ここでは、前置詞 in が場所としての役割を担っています。
動詞 andare は自動詞です。
Non esco per la pioggia.
(わたしは)雨だから出かけない。
この文の per la pioggia が間接補語です。前置詞 per を付けて間接的に文章を補っています。ここでは、前置詞 per が出かけない理由としての役割を担っています。
動詞 uscire は自動詞です。
Compro un letto di legno.
(わたしは)木材のベッドを買う。
この文の di legno が間接補語です。前置詞 di を付けて間接的にどんなベッドなのかを補っています。ここでは、前置詞 di が素材・材料としての役割を担っています。ちなみに、un letto は他動詞 comprare の直接目的語(〜を)です。
今度は間接目的語をみてみましょう。
Scrivo una lettera ai miei.
(わたしは)両親に手紙を書く。
この文では、他動詞 scrivere の直接目的語が una lettera、ai miei は間接補語になります。前置詞 a を付けて間接的に文章を補っています。ここでは、「手紙を書く」という動作の対象が「両親」に向けられているんだよ、ということを表しています。この間接補語を間接目的語と呼び、ほかの間接補語と分けて説明します。
間接目的語は名詞に前置詞 a を付けて動詞の動作がどこに・だれに向けられるのかを表しています。前置詞 a を付けて間接的に補うので間接目的語と呼ばれています。直接目的語のように他動詞に限定されず自動詞でも使います。また、ここでは取り上げませんが、名詞や形容詞にも使います。最初のうちは、日本語の「〜に」に当てはまるものと考えてみると理解しやすいかもしれません。
自動詞って何?
- 自動詞は直接目的語をとりません。
- 自動詞の例:
1. andare, camminare, dormire のように移動や運動、行為を表す動詞
2. essere, rimanere, stare のように主語の状態や様子を表す動詞 - 動詞によっては、自動詞としても他動詞としても両方で使われる動詞があります。
例)cominciare(始まる・〜を始める), finire(終わる・〜を終える), parlare (しゃべる・〜を話す)など
他動詞については、イタリア語直接目的語の記事で簡単に説明をしています。
どんなものが間接目的語になるの?
間接目的語になるのは次の2つです。
- 名詞
- 代名詞
1. 名詞
Scrivo una lettera ai miei.
(わたしは)両親に手紙を書く。
- あさこは「書く」→ 何を?「手紙を」→ 他動詞 scrivere の直接目的語
- 「手紙を書く」誰に向かって?→ 「両親に」ai miei は名詞です。
- ai は 前置詞 a と男性名詞複数の定冠詞 i の結合形です。
2. 代名詞
- 一度話題に上がった物や人については、繰り返し同じ表現を避けるために、代名詞に置き換えて表現します。
- 置き換えるのは、前置詞 a と名詞の部分です。
- 間接目的語の性・数に応じて適切な代名詞を選ぶ必要があります。
- 直接目的語で使う代名詞とは異なり、複合形過去形をつくるときの過去分詞の語尾は性・数に応じた変化をしません。(この記事では取り上げません。)
– Asaco, telefoni a Mario?
– あさこ、マリオに電話するの?
– Sì, gli telefono.
– うん、(わたしは)(彼に)電話するよ。
- あさこは「電話をする」→ 電話をする対象は誰?「マリオに」 a Mario が間接目的語です。
- a Mario は「彼に」と置き換えられるので3人称男性単数の代名詞 gli に置き換えます。
- 間接目的語で使う非強勢形の代名詞には前置詞 a が含まれています。
- telefonare は自動詞なので直接補語をとりません。
このように、一度話題に上がった単語は繰り返しを避けて、代名詞を使って表します。
人称 | 単複 | 日本語(〜に) | 非強勢形 | 強勢形 |
---|---|---|---|---|
1人称 | 単数 | わたしに | mi | a me |
2人称 | きみに | ti | a te | |
3人称 | 彼に | gli | a lui | |
彼女に あなたに | le Le | a lei a Lei | ||
1人称 | 複数 | わたしたちに | ci | a noi |
2人称 | きみたちに | vi | a voi | |
3人称 | 彼らに/彼女たちに | gli | a loro | |
代名詞の強勢形
◇ 非強勢形に比べて強いニュアンスを表し、よく使われます。
– A chi dai questo libro?
(きみは)誰にこの本をあげるの?
– A te.
(わたしは)(この本を)君に(あげるん)だよ。
間接目的語の「きみに」ということを強調して伝えることができます。
◇ a loro が動詞の直後に置かれる場合は、前置詞 a を付けずに loro だけで使います。
Lo dico loro. ( = a loro)
(わたしは)(そのことを)彼らに言うよ。
◇ a だけでなくほかの前置詞と一緒にうことがあります。
その場合は、意味を強調しているわけではなく、単なる「前置詞+代名詞の強勢形」のルールです。
Vado in Italia con te.
(わたしは)あなたとイタリアに行く。
Parlavate di me?
(きみたちは)わたしのことについて話してたの?
Dopo passo da te.
(わたしは)あとできみのところに寄るよ。
代名詞の結合形
直接目的語の代名詞が3人称の場合(lo, la, li, le)は、間接目的語の代名詞と結合させて表現することができます。
結合形には次のようなルールがあります。
- 間接目的語(〜に)+直接目的語(〜を)という順番です。
- 1人称と2人称の間接目的語 me, ti, ci, vi は、me, te, ce, ve になります。
- gli から始まるもの以外は、スペースを入れて別々に書きます。
- gli と直接目的語の代名詞が結合する場合は、gli と代名詞の間に e を入れて、ひとつにまとめて書きます。
例文でみてみましょう。
– Asaco, presti la macchina a Mario?
– あさこ、マリオに車を貸すの?
– Sì, gliela presto?
– うん、(わたしは)彼に車を貸すよ。
- あさこは「車を貸す」→ la macchina は他動詞 prestare の直接目的語
- la macchina は3人称女性単数の代名詞 la 「それを」に置き換えます。
- 「車を貸す」という動作は誰に向けられる?→ a Mario の「マリオに」が間接目的語です。
- a Mario は3人称男性単数の代名詞 gli 「彼に」へ置き換えます。
- 下記の表から「彼に」「それ(女性単数)を」が当てはまる gliela を使って表現します。
lo | la | li | le | ||
彼・それを | 彼女・それを | 彼ら・それらを | 彼女たち・それらを | ||
mi | わたしに | me lo | me la | me li | me le |
ti | きみに | te lo | te la | te li | te le |
le gli Le | gli彼女に 彼ら・彼女らに (丁寧な)あなた | 彼にglielo Glielo | gliela Gliela | glieli Glieli | gliele Gliele |
ci | わたしたちに | ce lo | ce la | ce li | ce le |
vi | あなたたちに | きみたちにve lo | ve la | ve li | ve le |
間接目的語はどこに置く?
文章の構成により異なりますが、代名詞を用いる場合は以下のようなルールがあります。
- 代名詞を使って表現する場合は、たいていは動詞の前に置きます。
- 補助動詞がある文章の場合、代名詞は2通りの置き方ができます。
* 結合形を使う場合には書き方に注意が必要です。
1. 代名詞は動詞の前に置く
– Asaco, telefoni a Mario?
– あさこ、マリオに電話するの?
– Sì, gli telefono.
– うん、(わたしは)(彼に)電話するよ。
動詞 telefonare の前に間接目的語 a Mario を置き換えた代名詞 gli を置きます。
否定文のnon は代名詞の前に置く
– No, non gli telefono.
– いや、(わたしは)(彼に)電話しないよ。
否定文をつくるときは、文全体を否定するので代名詞 gli より前に non を置きます。
3. 補助動詞がある文章の場合、代名詞は2通りの置き方がある
補助動詞とは、volere, potere, dovere, sapere のように、その後に動詞の不定詞を置いて表現がより豊かになるように動詞を補助している動詞です。
– Mi puoi telefonare fino alle dieci?
– (きみは)(わたしに)10時までに電話してくれる?
– Sì, ti posso telefonare. ①
– Sì, posso telefonarti. ②
– うん、(わたしは)(きみに)電話できるよ。
① 補助動詞 potere の前に代名詞 ti を置く
か、
② 補助動詞 provare の最後の文字 e を取り ti をぴったりとくっつける
か、2通りの方法があります。
補助動詞がある文章で代名詞の結合形を使う場合の注意
結合形を使う場合、 ② のパターンのように動詞の不定詞に直接付けるときは注意が必要です。
– Mi puoi prestare la tua macchina?
わたしにきみの車を貸してもらえない?
– No, non posso prestartela.
いや、(わたしは)(きみに車を)貸せないよ。
「きみに車を」の代名詞の結合形は te la とスペースを開けて書きますが、動詞の不定詞に付けるときは prestartela のようにスペースを取る必要があります。
すべての間接目的語が「〜に」とはならない
間接目的語の中には、日本語から考えてしまうと???となる場合があります。
日本語とはまるで違う文章のつくりと出会ったときにも理解できるよう、全ての間接目的語を日本語の「〜に」と捉えず、動詞の動作がどこに・だれに向かっているのか、考えてみましょう。
Gli hanno rubato il portafoglio.
彼は財布を盗まれた。
- 主語は、「誰が盗んだのか特定できない」ような場合、3人称の複数で能動態で表現することがあります。
- 他動詞 rubare の直接目的語は il portafoglio の財布です。
- gli は 間接目的語の a lui のことですが、盗むという動作が彼に向かって行われた、と考えてみましょう。
おわりに
みなさんのイタリア語学習の参考になりますように。